【理論】身体操作について
身体を動かすことの重要性
卓球はラケットを動かしてボールを入れるスポーツである。
ラケットを動かすとは身体を動かすことであり、すなわち身体の動き次第でボールの動きが変わってくる。
むしろボールの軌道を変えられる唯一の要素が身体の動きと言ってもいい。
以前の記事でボールのベクトルが重要であると述べたが、そのベクトルに関与できるのが身体の動きのみなのである。
しかし身体の動きというのは複雑で、細かく定義するには全ての関節や筋肉について考察しなければならない。
そのためどのように身体を動かせば効率的に欲しい動きが得られるのか、ということについては大まかに述べていくに留めておく。
身体中心で考える
ポイントを以下に述べる
- それぞれの関節で力が一番入るポイントを探る
- 動かす場合は大きい関節から考える
身体は関節を起点として動かされる。(実際は筋収縮•弛緩によって動くがここでは割愛)
そのため身体操作は基本的に関節ベースで考えなくてはならない。
意識する関節は上半身であれば肩•肘•手首、下半身であれば股関節•膝あたりまで出来れば十分だと思われる。
実際は指や脊椎(背骨)の関節も意識した方が良いのかもしれないが中々難しい。
そしてそれぞれの関節について、一番力が入るポイントを探る。
肘を例に例えると、ダンベルを持ち上げる時に肘を伸ばした状態から膝を少し曲げて持ち上げるのと、90度曲げた状態から少し曲げて持ち上げるのだと後者の方が楽なはずである。
このように軽い力で強い動きを生み出せるポイントをそれぞれの関節で探していく。
上半身の関節でその作業が終わった際にはそれぞれの関節で一番力が入るポイントを組み合わせて欲しい。フォア打ちで一番力が入るのは利き手側の足の爪先外側付近になるはずである。
また、一番力が入りやすいポイントは裏を返せば一番力が抜きやすいポイントでもある。力の出し入れがしやすいので融通が効きやすいポイントとも言える。
ボールが思ったより飛んで来なかったらとっさに前向きに力を入れたり、下回転が強かった時に直前に面やスイングスピードなどを変えやすかったりする。
これも極端に肘を伸ばした状態でフォア打ちをしてみれば分かるはずである。
ちなみに上級者が軽く振っているように見えて凄いドライブを打てるのもこのポイントで打っているからと思われる。
また、関節の動きを考える際にはまずは大きな関節から考えた方が良い。
大きな関節とは具体的には股関節と肩•膝である。
理由は二つある。
一つは、強いスピードを生み出しやすいこと。
もう一つはラケットの面がぶれにくいことである。
前者は体感的に分かると思われる。
後者に関しても体感的には分かりそうではある。ラケットの面を作るのは肘や手首が大部分だが、打球のためにラケットそのものを動かすのは大きい関節の方が良い。
卓球はラケット、ボールともに軽いスポーツであるため重さを感じることが少ない。それゆえに大きい関節を動かす意識が希薄になりがちである。
上記が大まかな身体の動かし方のヒントである。
ラケット中心で考える
考え方によってはこちらの方がしっくりくる人もいるかもしれない。
ドライブを打つにはこのラケット面でこっち側にこのくらい振る、ということから始まり、そのラケットの動きを実現するためにどのように身体を動かすかという考え方である。
昨今動画での技術習得が容易になってきており、視覚的に覚えやすいという点でメリットがあると思われる。
一方でラケットの動きばかりに注目すると身体の動きが効率的ではない、理にかなっていない可能性があるのでどこか不具合が出るリスクもあるのではないかと思われる。
例えば次の動きにつなげなかったり、安定性に欠けていたりなどである。
俗に言う我流の卓球はこちらに属しやすいのではないだろうか。
とはいえ、癖玉が出やすいというメリットもあるので市民レベルの卓球ではそこまで不利に感じることもないのかもしれない。
【理論】ボールの動きをベクトルから考える
ベクトルとは
ベクトルとは大きさと向きを持つ量のこと。
大きさとは運動量を指し、向きとは運動が働く方向のことを言う。
電車で例えるなら、走っている時はその進行方向に大きいベクトルが働いており、ブレーキを効かせるとそのベクトルは小さくなる。(細かく述べると間違っているかもしれないが大まかにはこんな感じ)
ベクトルは俗に矢印で表されることが多い。矢印の向きが運動の方向で、矢印の長さが運動量。
卓球のボールの動きはこのベクトルをベースに考えていく。
ボールの動きについて
卓球は打ったボールを相手のコートに入れるスポーツである。
それゆえに打った瞬間のボールのベクトルは非常に重要であると考えられる。
上から相手のコース方向へ、大きな下向きのベクトルを作れればスマッシュ。
ネットと同じ高さから、地面と並行方向に程よい大きさのベクトルを作ればツッツキもしくは回転によって流しやフリックにもなりうる。
卓球において、一般的にラケットに当たった際のボールの動きを定義するものは
- 飛んできたボールの回転、速さ
- ボールに対するラケットの動かし方
に区別されることが多いように思われる。
これにもう一点付け加えるなら、
- ボールがラケットに当たる瞬間のボールの進行方向
が重要である。
上記をベクトルベースで考えてみる。
例を取ってドライブに対するブロックで説明する。
ドライブはの回転が強ければ、ラケットに当たった時のボールのベクトルは上向きかつ矢印は大きくなる。
ドライブが速ければ、ラケットに当たった時のボールのベクトルは大きくなる。
ブロック時のラケットを前向きに動かせば、打ったボールのベクトルはラケットを動かさなかった場合と比べるとより前向きかつ大きくなる。(カウンター)
ブロック時のラケットを下向きに動かせば、打ったボールのベクトルはもちろん下向きになる。(カットブロック)
バウンド直後にブロックすると、打つ前のボールは頂点でブロックした場合と比べて上向きのベクトルが強く働いているため、同じラケット角度で当てた場合(ボールに対してではない)打った後のボールはより上向きのベクトルとなる。
最後の例は少し解釈が難しいところがあるかもしれないが、下回転に対するトライブを試しにバウンド直後で打ってみると体感しやすいのではなかろうか。
ベクトルで考える理由
何故こんな回りくどい解釈をしているかというと、周りくどくても答えを見つけやすくなるからである。
上のブロックの例だと、一般的にはボールのところに足を動かしてラケットを動かさないという指導がなされることが多いが、ナックルドライブや横回転が入ったドライブでも同じように対応できるだろうか。実際試合になった時に足が一歩出ずそれでもブロックを少しでも安定させるにはどうすればいいのだろうか。
このような問題を一元的に解決できるのがベクトルベースの考え方である。
そのため一般的に指導されるような、どのようにラケットを動かすのか、ひいては体を動かすのかは二次的な問題であると考える。つまり安定してこのようなベクトルを持ったボールを送りたいからこういう動きをするべきだ、と教えるのが理には適っていると思われる。
しかし実際は指導を受ける側の人間の理解度によってしまうため、ベクトルベースの考え方は最善とは思われるが最適かと言われると難しいところである。
定義一覧
○レベル帯
初心者・・・ラケットを握り始め〜基礎技術をひと通り経験
初級者・・・基礎技術がとりあえず入る〜町内会等の小さな大会で少し勝つ
技術的には
•フォア打ち、バック打ち、ツッツキを入れるだけだったらずっと続く
•コースを限定したフォアドライブやバックブロックが数回続く
•いろんな回転のサーブを出せるが短く(もしくはしっかり長く)コントロールできない
中級者・・・町内会ではおおよそ勝つが大きいオープン戦では入賞未満
技術的には
•フォアドライブはワンコースならずっと続けられる、コースを打ち分けられる
•バックドライブをコースを限定しなければ打てる
•ハーフロングサーブをある程度だせる
•チキータを限定的だが打てる
上級者・・・オープン戦入賞レベル(県上位)以上
•上記全ての技術においてコースを打ち分けられる
○技術習得
☆☆☆・・・間違いないと思われる要素
☆☆・・・ほぼ間違いないと思われるが検討の余地は少しあり
☆・・・効果はあると思われるが検討の余地は十分あり
○・・・万人受けはしないが試してみる価値あり
△・・・人によってはハマることはあるが一般的にはお勧めしない
×・・・出来ればやめておいた方が良い(個人の感想です)